台湾の現代詩史において常に輝きを放つ二人の詩人-楊牧(ヤン・ムー)と洛夫(ルオ・フ)。彼らはその命をかけて、文学を追い求め、台湾に不朽の作品を残し、後世の詩人たちに大きな影響を与えました。
台湾でノーベル文学賞に最も近いと言われた詩人たちの生涯を紐解きつつ、ドキュメンタリー映画上映会と作品展を通し、その代表的な作品の数々を紹介いたします。
■開催概要
共催:台湾文化センター、誠品生活日本橋
10月7日(水)〜10月30日(金) 台湾文化センター
10月7日(水)〜11月15日(日) 誠品生活日本橋
■作家原稿と作品展
時代を代表する台湾の二人の詩人・楊牧と洛夫の生涯をたどりながら、手書き原稿(複製)を展示、作品創作の機微を感じることができます。
また希少価値のある旧版、翻訳書やその代表作なども展示いたします。楊牧、洛夫は共に、中学生の頃から詩の世界で活躍しており、晩年もその創作意欲が衰えることはありませんでした。これらの展示品は、まさに台湾現代詩を代表する詩人二人のルーツを知るためのタイムトンネルのようなものです。
■スタンプラリー
楊牧、洛夫の詩から名文をチョイスしてスタンプを作りました。誠品生活日本橋と台湾文化センターにスタンプを設置、イベント期間中にパンフレット(台湾文化センター及び誠品生活日本橋のレジカウンターで配布)の最後の1ページをご利用いただき、四つのスタンプをすべて集めると、記念品の竹製しおりと交換できます。
※記念品の交換は、台湾文化センター、または誠品生活日本橋で行っております。
※数に限りがありますので、品切れの際はご容赦ください。
■ドキュメンタリー映画上映会
台湾文学の著名作家たちをテーマとした大好評のドキュメンタリーシリーズ『島の物語を紡ぐ者たち』(原題:他們在島嶼寫作)も、すでに台湾で13作を制作。今回は、楊牧を扱った『一篇の詩の完成に向かって』(原題:朝向一首詩的完成)と、洛夫を扱った『岸のない河』(原題:無岸之河)を日本で初上映します。
このドキュメンタリーからは、二人の詩人の生き方だけでなく、それぞれの作家が人生をかけて書き出してきた台湾文学の軌跡を感じることができるでしょう。
【台湾文化センターでの上映スケジュール】
10月8日(木)19時 楊牧『一篇の詩の完成に向かって』
10月9日(金)19時 洛夫『岸のない河』
※申し込み:9月29日(火)午前11:00より
10月22日(木)15時 楊牧『一篇の詩の完成に向かって』
10月23日(金)15時 洛夫『岸のない河』
※申し込み:10月13日(火)午前11:00より
※事前申し込みで、各日程先着30名様が無料でご参加いただけます。台湾文化センターのホームページよりお申し込み下さい。
【オンライン上映のスケジュール】
10月17日~24日 楊牧『一篇の詩の完成に向かって』※申し込み:9月26日(土)より
10月24日~31日 洛夫『岸のない河』※申し込み:10月11日(日)より
※事前申し込みで、先着100名様が無料でご参加いただけます。
配信プラットフォームを参加決定者に個別にメールでお知らせします。ピーティックスよりお申し込み下さい。
『一篇の詩の完成に向かって』
2011年|台湾|カラー|75分
写真 | 目宿媒體Fisfisa Mediaより提供
詩を唇にのせる楊牧の美しい韻律のなかで、台湾文学の四季が立ち上がっていく。波風を共に乗り越えた教え子や作家仲間たちの言葉から、その確かな足跡が解き明かされる。幼少時代を過ごした花蓮、転換期を迎えたバークレー、遂にたどり着いた中央山脈…台湾に永遠の詩を残した人の深くて静かなる言語世界――。
監督|溫知儀(ウェン・ジーイー)
出演|楊牧(ヤン・ムー)
原題|朝向一首詩的完成
製作・出品|目宿媒體 Fisfisa Media
日本語字幕|池田リリィ茜藍
監修協力|劉怡臻(リュウ・イージェン)
字幕制作|ホワイトライン
©2011 Fisfisa Media All Rights Reserved.
『岸のない河』
2014|台湾|カラー|93分
写真 | 目宿媒體Fisfisa Mediaより提供
自身の日記と代表作『石室の死亡』の一文一句が、時空間を交差しながら全編を貫く。職業軍人として幾多の戦禍をくぐり抜け、数々の衝撃作を世に送り出した、華人文学界の“詩魔”。 批判を浴びながらも、怯まず死や時間と向き合い、狭い道をどこまでも突き進んで行った。果たして彼が目指した境地とは――。
監督|王婉柔(ワン・ワンロー)
出演|洛夫(ルオ・フ)
原題|無岸之河
製作・出品|目宿媒體 Fisfisa Media
日本語字幕|池田リリィ茜藍
監修協力|劉怡臻(リュウ・イージェン)
字幕制作|ホワイトライン
©2014 Fisfisa Media All Rights Reserved.
※作中の表現および製作者の意図については、本展の立場表明をするものではございません。
楊牧(ヤン・ムー)
台湾・花蓮生まれ。東海大学外国語文学科、アイオワ大学英語文学修士、カリフォルニア大学バークレー校比較文学博士。詩人、エッセイスト、翻訳者、そして学者というマルチな活躍で知られ、台湾文学界に多大な影響を及ぼしてきた。その作品は、イメージを重んじた洗練された言葉で表現されており、西洋の詩と中国古典の文学的技巧を合わせ持っている。また作品の音楽性も魅力的となっている。アイルランドの詩人・イェイツの影響を受け、ロマン主義をベースに、ヒューマニスティックな面も兼ね備えている。特に1972年にペンネームを「葉珊」から「楊牧」に変えてからは、社会への関心が強まった。出版された著作は60作以上で、国家文芸賞、呉三連文芸賞、ニューマン華語文学賞、スウェーデン・チカダ賞などを受賞、詩やエッセイは英語、韓国語、ドイツ語、フランス語、日本語、スウェーデン語、オランダ語などに翻訳されている。
洛夫(ルオ・フ)
中国・湖南省生まれ。1949年に国民党軍に入隊し、軍隊とともに台湾へ渡った。台湾南部の左営で海軍陸戦隊に配属された頃、詩人・瘂弦、張黙と創世紀詩社を創設した。詩人であり、評論家、エッセイスト、書道家でもある。18歳から詩を書き始め、人生が幕をおろす最期の時まで創作を続けた。その道のりは、まさに台湾現代詩の歴史を体現している。戦時下にあった初期は、シュルレアリスムの影響を受け、強烈なイメージ、奇妙で冷淡な言語が特徴的だった。表現方法はファンタスティックで魔術的だったため、「詩魔」と称された。晩年は次第に恬淡としたスタイルへと変化、特に人生に対する思惟を重んじるようになった。73歳の時に三千行の長詩『漂木』を出版し、同年には台湾現代十大詩人の一人に選ばれた。呉三連文芸賞、国家文芸賞などを受賞。作品は英語、フランス語、日本語、韓国語、オランダ語、スウェーデン語などに翻訳されている。