
当店の書籍担当者3名が8冊ずつ推薦した準新刊の中から、毎月8点選んでいる誠品選書。
2025年8月も新たな選書が揃いましたので、ご紹介いたします。
『南洋標本館』
著者:葉山博子 出版社:早川書房
日本統治下の台湾を舞台に、複雑な生い立
ちを持つ台湾人の永豊と、台湾生まれの日
本人、琴司が、激動の時代の中、様々な葛
藤を抱えながら植物学者となる過程が熱く
描かれる。デビュー二作目とは思えない筆
力を持った著者による骨太な歴史長編小説。
『サイレントシンガー』
著者:小川洋子 出版社:文藝春秋
幼い頃から無口で慎み深い「内気な人の会」
の中で育った主人公リリカは、もの言わぬ
もののためにのみ歌うことができるように
なる。人の間に生まれる心と心のつながり
を、静かに、優しく、愛を持って描いた、
小川洋子6年ぶりの長編小説。
『よくわからないまま輝き続ける世界と』
著者:古賀及子 出版社:大和書房
日記を書くためにあえて何かをするのは違
うと思ってきた著者は、ある日、娘の言葉
に触発され、いつもとは違うちょっとした
ネタを毎日取り入れてみることに。文章の
リズムがとにかく心地よい。“日記文学界の
新星”の登場を心から寿ぎたい。
『ヨルダンの本屋に住んでみた』
著者:フウ 出版社:産業編集センター
ネットで偶然見つけたヨルダンの本屋に
心を奪われ、働くことになった著者。そ
こには著者と同様、世界各国からこの本
屋に惹かれてやってきた同世代の若者が。
言葉や文化の違いが明るい方向に働く様
子が生き生きと描かれた名エッセイ。
『わたしの上海游記』
著者:夏申 出版社:紀伊國屋書店
コロナ禍の上海で教鞭を取る著者の、読書
と日常を通じ文化を見つめ直すエッセイ集。
街の観察、異文化に触れる日々の記録から
この地で生きる意味を静かに問う。上海の
日常風景と著者の過去の読書録が交差する
表現は、新しい感覚を抱かせてくれる。
『ジェイムズ』
著者:パーシヴァル・エヴェレット 出版社:河出書房新社
マーク・トゥエインの名作『ハックルベリ
ー・フィン』を、黒人の逃亡奴隷ジム(ジ
ェイムズ)を主人公として描きなおし、20
24年の全米図書賞とピュリツァー賞をW受
賞した話題の傑作。差別に加担する人間の
醜悪さを余すところなく描き出す。
『版元番外地』
著者:下平尾直 出版社:コトニ社
2014年創業の一人出版社〈共和国〉。骨
太で繊細、ユニークで王道の作品ばかり作
り上げてきた孤高の社主・編集者の世界が、
自身の手で饒舌に丁寧に、何より面白すぎ
るほど面白く語られる。まずあとがき、次
にまえがきを読んでから本文をどうぞ。
『国境って何だろう? 14歳からの「移民」「難民」入門』
著者:内藤正典 出版社:河出書房新社
移民・難民問題を制度や条約、人々の選択
等の視点から解説。難民条約を読むなどの
構成は国際問題を自分ごととして捉え直す
機会となる。世界中で「自国民ファースト」
が叫ばれる今、見えなくなるものは何か、
私たちに必要な思考は何かを考えたい。
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台湾の誠品書店では、毎月「誠品選書」を選出しています。
1990年11月のスタート当時から、選書の基準を「すでに重版されたもの、版権のないもの、一時的に流行しただけのもの、通俗的な本は選ばない。学術的、専門的なもの、一般向けのものなどを問わず、難しいものである必要はないが、創作と出版に対する誠意があるものならジャンルを問わず推薦書籍とする」としました。
2019年、東京の日本橋にオープンした当店でも、「誠品選書」を通して読者に誠品の観点を伝えていきたいと考えています。日本の多種多様な出版物の中から、その月の代表的で、話題性、独創性があり、編集が優れている書籍をセレクトし、プレゼンテーションと投票によって、毎月8点の誠品選書を選出しています。