
当店の書籍担当者3名が8冊ずつ推薦した準新刊の中から、毎月8点選んでいる誠品選書。
2025年9月も新たな選書が揃いましたので、ご紹介いたします。
『ある、りんご園の一年』
著者:木村江利 出版社:時雨出版
世界で初めて無農薬・無肥料でのりんご栽培
に成功した木村秋則さんの次女によるフォト
ブック。のどかな写真からは想像できない、
自然栽培の過酷さ、両親との確執の過去―。
苦しみ、憎み、苦しみ、そして許しを経験
したことにより生まれた深みのある一冊。
『まだ大どろぼうになっていないあなたへ』
著者:ヨシタケシンスケ 出版社:ブルーシープ
大勢の人々が皆何かを押し殺して、狭い場
所所の中で浅く息を吐いて暮らすこの世の
中で、本当に手に入れるべきものを探し出
し、他人と自分を軛から解放すること。戦
う力を手に入れること。そのための手段な
のです、大どろぼうになるということは。
『出版という仕事』
著者:三島邦弘 出版社:筑摩書房
2006年に一人で出版社を立ち上げたミシマ社
の代表が現在の出版界や自身の仕事を語る。
紙の本にはデジタル媒体には無い「確かさ」
がある。そして、AI化が進むにつれ価値があ
がるのはリアルな場としての「書店」である。
力強い言葉の数々に胸が熱くなる。
『京都出町のエスノグラフィ』
著者:有馬恵子 出版社:青土社
小規模商店は本当に滅びゆくのか。という問
いを持って出町柳に身を置き調査、活動した
著者と街の人々の声、“生活者視点の京都”が
丁寧に描かれた一冊。オーバーツーリズムが
叫ばれる昨今、決して悲観的ではない声や街
の営みが存在していることに気づかされる。
『私たちに名刺がないだけで仕事してこなかったわけじゃない』
著者:京郷新聞ジェンダー企画班 出版社:大和書房
韓国大手新聞社の独自取材班による、丹念な
取材とデータから韓国女性の労働生活史をま
とめた一冊。なくてはならないのに名刺や肩
書きに残らない仕事をしてきた女性たちの苦
難、やりがい、仕事に対する誇りが、インタ
ビューや力強い写真から伝わってくる。
『ロレンスがいたアラビア』
著者:スコット・アンダーソン 出版社:白水社
今日のパレスチナ問題と中東世界の状況を
形成する契機となった、第一次世界大戦に
おける欧米列強の中東への介入の最前線で
暗躍した四人のスパイ。映画『アラビアの
ロレンス』では描かれなかったその実相に
丁寧に、鋭く迫る歴史ノンフィクション。
『ファッション・スタイルとカルチャーの大図鑑』
著者:FASHIONARY 出版社:パイインターナショナル
近現代の様々なファッションスタイル115種
を、衣服から細々とした雑貨に至るまで豊富
なイラストと解説で綴る一冊。この100年が
どんな時代で、資本主義と文化、個人の欲望
や志向がどのように作用しながら変遷してき
たかを通観できる。
『をとめよ素晴らしき人生を得よ』
著者:瀬戸夏子 出版社:柏書房
今まで多く語られなかった、女性だけの短歌
結社「女人短歌会」周辺の歌人の素顔と作品
に焦点を当てた群像伝記エッセイ。男性優位
の世界に抗い詠んだ作品の首評に加え、彼女
らのドラマさながらの生き様が描かれた同書
は、短歌に馴染みがない人も楽しめる一冊。
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台湾の誠品書店では、毎月「誠品選書」を選出しています。
1990年11月のスタート当時から、選書の基準を「すでに重版されたもの、版権のないもの、一時的に流行しただけのもの、通俗的な本は選ばない。学術的、専門的なもの、一般向けのものなどを問わず、難しいものである必要はないが、創作と出版に対する誠意があるものならジャンルを問わず推薦書籍とする」としました。
2019年、東京の日本橋にオープンした当店でも、「誠品選書」を通して読者に誠品の観点を伝えていきたいと考えています。日本の多種多様な出版物の中から、その月の代表的で、話題性、独創性があり、編集が優れている書籍をセレクトし、プレゼンテーションと投票によって、毎月8点の誠品選書を選出しています。