
当店の書籍担当者3名が8冊ずつ推薦した準新刊の中から、毎月8点選んでいる誠品選書。
2025年6月も新たな選書が揃いましたので、ご紹介いたします。
『YABUNONAKA』
著者:金原ひとみ 出版社:文藝春秋
昨今のMeToo運動に象徴される「時代の変
化」を描き出した圧巻の長編小説。大手出
版社の編集長がかつて交際していた作家志
望の20歳年下の女性から告発される。この
事件をめぐって7人の登場人物たちの周辺が
動き出す。人物の描き分けが見事。
『手仕事というもくろみ』
著者:吉田慎司 出版社:ブルーブラックカンパニー
美術大学を卒業し、進路に迷う中で出会っ
た伝統的な箒づくりに邁進するなかで著者
が出会い、対話し、思考してきた“世界と
の関わり”が丁寧な筆致で描かれる。
自らの手で“つくる”ことが生み出す豊かな
生のあり様を追体験する静かな感動の一冊。
『僕たちは言葉について何も知らない』
著者:小野純一 出版社:NewsPicksパブリッシング
SNSや書籍のテキストを読むことができな
い、読んでも書き手の意図が理解できない
ことは自身にとっても他者にとっても不幸
なことだという感覚が人々から失われつつ
ある現在。自らの言語感覚に不安を抱える
あなたに是非おすすめの一冊。
『PLURALITY』
著者:グレン・ワイル、オードリー・タン他 出版社:ライツ社
差異が社会における対立や分断を生むので
はなく、新たな社会の協同と調和を生むた
めの方法を探る。台湾の初代デジタル発展
省大臣オードリー・タンとマイクロソフト
の首席研究員にして気鋭の経済学者グレン・
ワイルによる新たな社会の美しき道標。
『血と反抗』
著者:石井光太 出版社:幻冬舎
出稼ぎを目的として来日した外国人の子ど
もたちが、理不尽な現実によって社会から
はじき出され、犯罪に走るプロセスに焦点
を当てたノンフィクション。外国人受け入
れ政策のゆがみや差別、貧困といった、日
本が抱える社会問題が浮き彫りになる。
『焼中原昌也死体たちの革命の夜』
著者: 出版社:河出書房新社
糖尿病合併症による脳梗塞から奇跡的に生
還した半身不随の著者が、倒れる直前に書
いた短編小説集。崩壊感覚と生の問いを含
む傑作集で、表題作はフィリピン人女性の
死から生と日常を考察。ベルンハルト、カ
フカ、ベケットらを彷彿とさせる独自の世
界観が凝縮された一冊。
『修理する権利』
著者:アーロン・パーザナウスキー 出版社:青土社
世界各地で実際に起きている「修理する権
利」を求める運動とその背景にある問題、
そして運動に関わる人々の活動を取材し、
まとめた一冊。消費者の「自分で直したい」
という欲求は、持続可能な社会への一歩を
感じさせる。
『誘拐された西欧、あるいは中欧の悲劇』
著者:ミラン・クンデラ 出版社:集英社
2023年に亡くなったチェコの作家、ミラン・
クンデラが生涯をかけて探求した「中欧」
と「小民族」という概念をめぐる論考。主
体的な関与がないまま自国の運命が一変す
る状況は、現在、世界の多くの国にあては
まる。日本も例外ではない。
店頭受け取り、オンライン売り切れ商品等のお問い合わせはお電話にて承ります。
03-6225-2871
台湾の誠品書店では、毎月「誠品選書」を選出しています。
1990年11月のスタート当時から、選書の基準を「すでに重版されたもの、版権のないもの、一時的に流行しただけのもの、通俗的な本は選ばない。学術的、専門的なもの、一般向けのものなどを問わず、難しいものである必要はないが、創作と出版に対する誠意があるものならジャンルを問わず推薦書籍とする」としました。
2019年、東京の日本橋にオープンした当店でも、「誠品選書」を通して読者に誠品の観点を伝えていきたいと考えています。日本の多種多様な出版物の中から、その月の代表的で、話題性、独創性があり、編集が優れている書籍をセレクトし、プレゼンテーションと投票によって、毎月8点の誠品選書を選出しています。