2023-05-01

【誠品選書】2023年5月おすすめ書籍

当店の書籍担当者3名が8冊ずつ推薦した準新刊の中から、毎月8点選んでいる誠品選書。
2023年5月も新たな選書が揃いましたので、ご紹介いたします。

  • 『街とその不確かな壁』
    著:村上春樹 出版社:新潮社

    17歳の主人公と交際していた1歳年下の彼女が、謎の言葉を残して姿を消す。喪失感を抱えたまま中年になった彼は、自分の影と分かれて「高い壁に囲まれた街」で静かに暮らす。「影」「高い壁」とは何を表すのか。解釈は読者に委ねられている。

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  • 『くもをさがす』
    著:西加奈子 出版社:河出書房新社

    2021年、滞在先のカナダで乳がんが発覚した西加奈子さん。当時は医療崩壊が起きており、そのさなかにコロナにも感染。この日々を乗り越えた著者による力強いメッセージが詰まった一冊。支えとなった書物中の引用も含め、言葉の持つ力を実感する。

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  • 『招かれた天敵』
    著:千葉聡 出版社:みすず書房

    生態系のバランスが崩れているのは、自然や生物が人間にもたらす問題を、科学の力で解決しようと試みてきた結果だ。「害ある生物」と闘う有益な生物のはずが、無害な自然と生物をも駆逐する。人類の失敗から生物多様性の未来を考えていこう。

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  • 『ことばの教育』
    著:紅野謙介 出版社:青土社

    学習指導要領が改訂され、国語が文学・論理・表現・古典の4つに分かれる。文学の中に論理が包摂されると説く著者は、文学と論理の分断、実用的文章を読むことに重きを置く国語教育に疑問を呈す。

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  • 『依存症と人類』
    著:カール・エリック・フィッシャー 出版社:みすず書房

    同じ依存症であっても、患者の社会的地位や人種、環境等外的要因によって差別や疎外の対象になる―。自らもアルコール依存に陥り回復した“金髪白人高学歴”の精神科医が描く、人類と依存症の歴史は、圧倒的な筆力で読み物としても秀逸。

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  • 『五月 その他の短篇』
    著:アリ・スミス 出版社:河出書房新社

    スコットランドの女性作家の短篇集。木に恋をしてしまった女性が主人公の表題作のほか、地下鉄駅構内で死神とすれちがう話、他人に見えないバグパイプの楽隊につきまとわれる老女の話など。著者の不可思議な小説世界は何度でも体験したくなる。

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  • 『原爆写真を追う』
    著:林重男・井上祐子 出版社:図書出版みぎわ

    原子爆弾が投下された直後の広島と長崎に入り、その惨状を撮ったカメラマン・林重男の残した記録を、彼の評伝を付して今に蘇らせた貴重な一冊。あの惨禍を後の世に“また起こりうること”として伝えるための手段を私たちは失ってはならない。

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  • 『市川房枝、そこから続く「長い列」』
    著:野村浩子 出版社:亜紀書房

    平塚らいてうらとの戦前の女性参政権獲得運動に始まり、女性差別撤廃条約批准の推進、男女雇用機会均等法の成立を後押しした市川房枝。しかし2023年の現在に至っても、依然性差別は現存する。“権利の上に眠るな”との市川の言葉の意味とは―。

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台湾の誠品書店では、毎月「誠品選書」を選出しています。
1990年11月のスタート当時から、選書の基準を「すでに重版されたもの、版権のないもの、一時的に流行しただけのもの、通俗的な本は選ばない。学術的、専門的なもの、一般向けのものなどを問わず、難しいものである必要はないが、創作と出版に対する誠意があるものならジャンルを問わず推薦書籍とする」としました。

2019年、東京の日本橋にオープンした当店でも、「誠品選書」を通して読者に誠品の観点を伝えていきたいと考えています。日本の多種多様な出版物の中から、その月の代表的で、話題性、独創性があり、編集が優れている書籍をセレクトし、プレゼンテーションと投票によって、毎月8点の誠品選書を選出しています。