
当店の書籍担当者3名が8冊ずつ推薦した準新刊の中から、毎月8点選んでいる誠品選書。
2024年11月も新たな選書が揃いましたので、ご紹介いたします。
『耳に棲むもの』
著者:小川洋子 出版社:講談社
亡くなった補聴器のセールスマンの耳の中
から出てきて4つの骨のかけら。耳に棲ん
でいたものたちと彼をめぐる物語が、過去
を遡る形で繰り広げられる。いずれはこの
世界から形がなくなるものに対する著者の
温かい眼差しが感じられる。慈愛の一冊。
『新しい恋愛』
著者:高瀬隼子 出版社:講談社
曰く言い難い感情を言語化することに長け
た著者による“恋愛”がテーマの短編集。
周りの評価や世間の目と関係なく、その人
自身を単体で純粋個別的に好きでいること
は大人になってからも可能か?という問い
を読者に突きつけてくる。
『なぜスナフキンは旅をし、ミイは他人を気にせず、ムーミン一家は水辺を好むのか』
著者:横道誠 出版社:ホーム社
発達障害と診断された著者ならではの視点
から、ムーミンシリーズそして筆者のトー
ベ・ヤンソンを考察している。同作品が自
閉症スペクトラム症の特性と相性が良い等
の仮説から、各キャラクターの特性を解説。
発達障害についての理解が深まる一冊。
『わたしの農継ぎ』
著者:高橋久美子 出版社:ミシマ社
二拠点生活で兼業農家の跡継ぎをした筆者
の新しい“農”の形を模索した奮闘記。稼ぐ
ことが目的ではなく、自給自足+αで良い
という考えから始めたゆえの失敗や成功
体験がコミカルに綴られる中で、“やれな
くないよ!”という想いが伝わってくる。
『親の家が空き家になりました』
著者:葉山由季 出版社:潮出版社
同居していた母の急死をきっかけに湧き起
こる、相続、実家の空き家問題に直面した
主婦の物語。フィクションだが、家族の確
執、役所や不動産屋との向き合い方がリア
ルに表現されている本書は、いつか自分に
降りかかった時のバイブルにもなるだろう。
『メタフィジカルデザイン』
著者:瀬尾浩二郎 出版社:左右社
「つくるための哲学入門」と定義された本
書で、著者は、物事を考え進めていくため
の「問い」と、考えたことを整理し定義す
るための「概念」を主な道具として紹介す
る。製品であれ仕組みであれ、モノづくり
に関わるすべての人の必読書。
『台湾人の歌舞伎町ー新宿、もう一つの戦後史』
著者:稲葉佳子・青池憲司 出版社:筑摩書房
敗戦までの50年間、日本の統治下にあった
台湾。“日本兵”として駆り出された者たち、
留学生、様々な台湾人が敗戦後逞しく生き
延びたが、中でも新宿・歌舞伎町を現在まで
続く盛り場に創り上げた人々の人生を描く、
迫真の記録。掛け値なしに面白い。
『朝と夕』
著者:ヨン・フォッセ 出版社:国書刊行会
昨年ノーベル文学賞を受賞したノルウェー
の作家による小説。貧しいながらも7人の
子どもを育て上げた漁師が主人公。母の胎
内から生まれ落ちた瞬間を切り取った第一
部と、彼の最後の一日を丹念に追った第二
部から、人生の“朝と夕”を描き出している。
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台湾の誠品書店では、毎月「誠品選書」を選出しています。
1990年11月のスタート当時から、選書の基準を「すでに重版されたもの、版権のないもの、一時的に流行しただけのもの、通俗的な本は選ばない。学術的、専門的なもの、一般向けのものなどを問わず、難しいものである必要はないが、創作と出版に対する誠意があるものならジャンルを問わず推薦書籍とする」としました。
2019年、東京の日本橋にオープンした当店でも、「誠品選書」を通して読者に誠品の観点を伝えていきたいと考えています。日本の多種多様な出版物の中から、その月の代表的で、話題性、独創性があり、編集が優れている書籍をセレクトし、プレゼンテーションと投票によって、毎月8点の誠品選書を選出しています。