2021-09-02

【2021台湾文学展】第二弾:妖怪台湾──華麗なる魑魅魍魎(後編)

夏の風物詩といえば、身の毛もよだつ怪談話。泣く子を呑み殺す「虎姑婆(フゥグゥポー)」に、山に入った人を迷わせる「魔神仔(モシナ)」、女子を強引に娶る蛇の化身「蛇郎君(シェランジュン)」など、灼熱の太陽が照りつける台湾でも、束の間の涼を求めて、地域に伝わる妖怪談が人々の関心を集めています。民主化運動や台湾アイデンティティの躍動とともに、忌避されてきた台湾の妖怪たちは民間伝承の場を離れて、小説、映画、ゲームといったさまざまなコンテンツで跋扈し、今や大衆文化の一部となっています。今回の特集では、台湾の文青(文芸青年)の間でとりわけ人気の高い怪談創作を紹介し、台湾発の妖怪の魅力を探ります。

  • 日本語で読める台湾のホラー作品・妖怪案内

    台湾妖怪地図(妖怪臺灣地圖)*原書房より刊行予定
    妖怪とは風土の記憶であり、そこに住まう人々の精神史である。台湾各地に出向いて、作家自ら説話、俗信、歌謡、芸能、絵画など、多方面にわたって怪異伝承を蒐集し、考察を重ね、その輪郭を捉えた意欲作。

  • ont size="4">ブラックノイズ(荒聞)*8月に文藝春秋より刊行
    心の隙や人の弱みにつけ込む“黒い声”。現世をさまよう日本統治時代の怨霊が、悪の囁きとなって人々の幻聴を引き起こし、死に追いやる――。歴史的実話と原住民の伝説が合わさった、台湾ホラー小説の最高傑作。

  • おはしさま(筷)*9月に光文社より刊行予定
    日本・台湾・香港の人気作家5名による、リレーミステリ。「箸」をテーマに、3つの異なる怪異譚が数珠つなぎで紡がれていくも、後半へと進むにつれて一気に伏線回収され、最終話になだれ込む。各作家の個性がいかんなく発揮された競作でありながら、整合が取れた怪奇ミステリ短編集。

  • 返校 影集小說(返校 影集小說)*7月にKADOKAWAより刊行
    台湾発ホラーゲーム「返校」の実写ドラマのノベライズ本。戒厳令が敷かれた60年代、翠華高校の教師と生徒も密告によって迫害されてしまう。30年の時を経て、とある女学生が禁じられた場所に足を踏み入れてしまったことで、おぞましい真相に近づいていく――。

  • 鬼地方(鬼地方)*邦訳刊行予定
    物語の舞台は、著者の出身地である彰化県の田舎町。けれども“忌み地”と化した集落は、もはやふる里と呼ぶにはほど遠い。ねじれた家族関係から、知られざる町の姿、恐怖の時代、無情な人の世までを、陳家それぞれの視点から浮き彫りにし、黒い秘密を暴いていく――。

2021年10月中旬まで、誠品生活日本橋「台湾文化視点コーナー」にて絶賛展示販売中。是非お越しくださいませ。