
当店の書籍担当者3名が8冊ずつ推薦した準新刊の中から、毎月8点選んでいる誠品選書。
2024年3月も新たな選書が揃いましたので、ご紹介いたします。
『東京都同情塔』
著:九段理江 出版社:新潮社
舞台は寛容論が浸透した近未来の日本。犯
罪者が快適に暮らすための収容施設の設計
を請け負うことになった女性建築家は日々
感じる違和感や社会の問題点を饒舌に語る。
AIの模範的文章と生身の人間の書いた文章
の違いを明確にした芥川賞受賞作。
『ロゴスと巻貝』
著:小津夜景 出版社:中央出版
著者はフランス在住の俳人。本や読書につ
いてのエッセイ集だが、一歩距離を置いて
「読書」という行為を俯瞰する視点で捉え
ているのが特徴的。漢詩について綴った著
者の既刊『いつかたこぶねになる日』もあ
わせてお読みいただきたい。
『いのちの選別はどうして起こるのか』
著:トーマス・フィッシャー 出版社:亜紀書房
コロナ禍のアメリカ医療現場では、経済格
差や人種差別により「選別」され、救われ
無かった命がたくさんあった。平時の医療
よりも切迫した救急救命室で、差別・貧困
・格差と戦った医師の1年を追った本書。
発せられる警鐘は無視できないだろう。
『市民的抵抗』
著:エリカ・チェノウェス 出版社:白水社
非暴力などの、暴力よりも効果がある抵抗
を「市民的抵抗」と呼ぶ筆者は、直近の百
年では暴力より市民的抵抗のほうが変革を
成功させていると言う。現代の革命につい
てテンポよく一問一答形式で説き明かして
いく本書は、読み応え抜群である。
『注文の多すぎる患者たち』
著:ロマン・ピッツィ 出版社:ハーパーコリンズ・ジャパン
野生動物を診察し治療し時に手術も行う獣
医が記す、動物たちのカルテ。目的は調査
研究だけでなく、絶滅危惧種の保護にも活
かされる。動物園では見ることのできない、
野生動物たちの切実な「医療問題」と「絶
滅の危機」が浮き彫りにされる1冊。
『波打ちぎわの物を探しに』
著:三品輝起 出版社:晶文社
インターネットの“波打ちぎわ”で薄暮に
たゆたう物たちを一つひとつ拾い上げ、砂
を払い、清潔なタオルで水を拭く。東京・
西荻窪で2005年から雑貨店『FALL』を
営む著者が、時代と共に変わりゆく物と人
とのかかわりを丁寧に描き出すエッセイ集。
『Anouchkaの’60s-’70s英国ヴィンテージトピアA to Z』
著:金子美雪 出版社:DU BOOKS
60年代から70年代にかけてのロンドンカル
チャーが放つ芳香はいまだ薄れることがな
い。熱狂的なファンを持つ国分寺のヴィン
テージショップ『アヌーシュカ』店主によ
る、時代と場所への“偏愛”の記録。20代の
ポールやミックの声が聴こえてくるー。
『ハリケーンの季節』
著:フェルナンダ・メルチョール 出版社:早川書房
村の用水路で発見された“魔女”の死体、彼
女を殺したのはいったい誰なのか。貧困と
暴力、麻薬、マチズモ、虐待、迷信、無知
の村の現実が、改行なし、言葉も地の文も
ない交ぜの張り詰めた文章で語られる。世
界で話題を呼んだブッカー賞最終候補作。
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台湾の誠品書店では、毎月「誠品選書」を選出しています。
1990年11月のスタート当時から、選書の基準を「すでに重版されたもの、版権のないもの、一時的に流行しただけのもの、通俗的な本は選ばない。学術的、専門的なもの、一般向けのものなどを問わず、難しいものである必要はないが、創作と出版に対する誠意があるものならジャンルを問わず推薦書籍とする」としました。
2019年、東京の日本橋にオープンした当店でも、「誠品選書」を通して読者に誠品の観点を伝えていきたいと考えています。日本の多種多様な出版物の中から、その月の代表的で、話題性、独創性があり、編集が優れている書籍をセレクトし、プレゼンテーションと投票によって、毎月8点の誠品選書を選出しています。