
当店の書籍担当者3名が8冊ずつ推薦した準新刊の中から、毎月8点選んでいる誠品選書。
2024年2月も新たな選書が揃いましたので、ご紹介いたします。
『隆明だもの』
著:ハルノ宵子 出版社:晶文社
『共同幻想論』等の著作で知られた思想家
吉本隆明は、果たして家庭においてはど
のような存在だったのか。彼の娘で作家・
吉本ばななの姉、漫画家の著者が描いた父
と家族のリアル。『吉本隆明全集」の月報
で大好評の連載を加筆・修正の上単行本化。
『戦争語彙集』
著:O・スリヴィンスキー R・キャンベル 出版社:岩波書店
ウクライナの詩人が市民から聞き取った戦
時下での体験をもとに、日常の言葉がアル
ファベット順に並べられている。戦争によっ
て言葉の意味が変わるという現実と、人々
が必要としているのは自らの物語を誰かに
伝えることということも示している一冊。
『楽園』
著:アブドゥルラザク・グルナ 出版社:白水社
著者は英国領であったタンザニアに1948年
に生まれ、60年代に難民として英国に渡っ
た。植民地時代の記憶と実際に経験した痛
みをもとに、現代も続く人種差別の過酷さ
や難民の苦難を描いている。巻末に2021年
ノーベル文学賞受賞記念講演を収録。
『生まれ変わったらパリジェンヌになりたい』
著:淡谷のり子 出版社:河出書房新社
1999年に亡くなった著者が書き残したエッ
セイを再編集した一冊。歌手として成功す
るまでの苦労や、シングルマザーとして子
を生み育て、戦時中も軍歌を歌うことを断
固拒否するなど、一本芯の通ったこの人物
の思いを、あらためていま広く伝えたい。
『遺伝子が語る免疫学夜話』
著:橋本求 出版社:晶文社
著者は自己免疫疾患を専門とする医師。「過
去の人類が感染症を生き延びてきたからこ
そ現代の自己免疫疾患が生まれた」という
ような「免疫」に関するトピックを分かり
やすく解説。専門家が専門領域を一般の人
向けに興味深く書いたお手本のような一冊。
『極東のシマフクロウ』
著:ジョナサン・C・スラート 大沢章子 出版社:筑摩書房
絶滅の危険性が極めて高いシマフクロウは、
極東ロシア沿岸地域や北海道に生息する。
現地での調査研究からシマフクロウと人間
との関わりや保護の難しさをリアルに描く。
厳しい自然に分け入り探求する、“科学者
の冒険”譚と言えるのではないか。
『鬼の筆 戦後最大の脚本家』
著:春日太一 出版社:文藝春秋
黒澤映画の多くの作品で筆を執った戦後最
大の脚本家の一人・橋本忍。彼の栄光と挫
折を、現在ラジオやネット等で時代劇研究
家としても活躍中の映画史家が創作ノート
を含む膨大な資料と生前の橋本へのインタ
ビューを下敷きに描き出した力作評伝。
『家を失う人々』
著:マシュー・デズモンド 出版社:海と月社
ピュリッツァー賞他全米の図書賞を総なめ
にし、70万部販売された話題作がついに
翻訳刊行。2008年、ミルウォーキーを
舞台に家を失う最貧困層の家族に密着した
社会学者が描き出したアメリカの社会構造
に横たわる暗部とは。
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台湾の誠品書店では、毎月「誠品選書」を選出しています。
1990年11月のスタート当時から、選書の基準を「すでに重版されたもの、版権のないもの、一時的に流行しただけのもの、通俗的な本は選ばない。学術的、専門的なもの、一般向けのものなどを問わず、難しいものである必要はないが、創作と出版に対する誠意があるものならジャンルを問わず推薦書籍とする」としました。
2019年、東京の日本橋にオープンした当店でも、「誠品選書」を通して読者に誠品の観点を伝えていきたいと考えています。日本の多種多様な出版物の中から、その月の代表的で、話題性、独創性があり、編集が優れている書籍をセレクトし、プレゼンテーションと投票によって、毎月8点の誠品選書を選出しています。