
当店の書籍担当者3名が8冊ずつ推薦した準新刊の中から、毎月8点選んでいる誠品選書。
2025年2月も新たな選書が揃いましたので、ご紹介いたします。
『能十番』
著者:いとうせいこう ジェイ・ルービン 出版社:新潮社
現代人には難解な能の世界だが、「能は読
むのが面白い!」と、いとうせいこう氏。
精選された10の謡曲を、原文、現代語訳、
英訳の3つのバージョンで収録。和綴じの
謡本を模した全頁小口袋綴じ造本、スリー
ブ函入りの装丁も凝っている。
『リアル・メイキング』
著者:ターニャ・L・ラーマン 出版社:慶応義塾大学出版会
熱烈な信仰が信者を変え、遂には彼らにと
って本当に神が実在する(!)に至るプロ
セスについて、福音主義キリスト教徒、異
教徒、魔術師ら様々な信仰者達に関する民
族誌的研究等を踏まえながらスタンフォー
ド大学人類学部教授が著した労作。
『デザインにできないこと』
著者:シルビオ・ロルッソ 出版社:ビーエヌエヌ
今や私たちの日々の暮らしにあって、世界
を織り上げる万能の存在のように扱われて
久しいデザインが実際にクリエイションに
携わる人々にとっては日々高まる人々の期
待値ゆえにその限界を意識せざるを得ない
深刻な状況に陥っている状況と希望を描く。
『庭の話』
著者:宇野常寛 出版社:講談社
インターネットの発展はあらゆる人びとに情
報発信の手段を与えたが、SNSが「プレイヤー
同士の低コストな承認の交換でしかない」昨
今、個人が個人のまま社会とかかわる「庭」
のような場が必要なのではないかと説く。
いまこの時代にあるべき「庭」とは何か。
『小島の春』
著者:小川正子 出版社:河出書房新社
1938年に刊行された書籍の復刊。若い女医が
ハンセン病患者のもとを訪ね歩き、療養所
への入所を勧めたこの手記は、文学的に高
く評価され社会現象にもなったが、後年、
差別の助長に加担したと批判もされた。善
意と人権問題の関係を考えさせられる一冊。
『想いはこうして紡がれる』
著者:吉田恵美子 出版社:英治出版
福島の専業主婦が立ち上げた団体が古着リ
サイクル活動をはじめ、住民主体のまちづ
くりとして定着させていく。違和感に気づ
き、それを変えるために起こした小さな一
歩が、多くの人の意識を変えた事実は、社
会活動への参画の大切さに気付かされる。
『ジェリコの製本職人』
著者:ピップ・ウィリアムズ 出版社:小学館
オックスフォード大学の出版局製本所で働
く女工ペギーが、仕事を通じて言葉と出会
い、学問へのアプローチを夢見て成長する
姿と、ひとつひとつ手作業だった当時の製
本過程が描かれる。人や本との出会いや紙
の本の素晴らしさが詰まった一冊。
『ヴォイニッチ写本』
著者:安形麻理 安形輝 出版社:講談社
1912年にイタリアで発見されたその手稿に
は、いまだ未解読の文字と奇妙な多数の絵
が描かれていたー。以来世界中で続けられ
る解読の試みに、データサイエンスの手法
を用いて挑む日本の研究者達の最新の成果。
荒俣宏氏と著者らの鼎談を含む。
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台湾の誠品書店では、毎月「誠品選書」を選出しています。
1990年11月のスタート当時から、選書の基準を「すでに重版されたもの、版権のないもの、一時的に流行しただけのもの、通俗的な本は選ばない。学術的、専門的なもの、一般向けのものなどを問わず、難しいものである必要はないが、創作と出版に対する誠意があるものならジャンルを問わず推薦書籍とする」としました。
2019年、東京の日本橋にオープンした当店でも、「誠品選書」を通して読者に誠品の観点を伝えていきたいと考えています。日本の多種多様な出版物の中から、その月の代表的で、話題性、独創性があり、編集が優れている書籍をセレクトし、プレゼンテーションと投票によって、毎月8点の誠品選書を選出しています。