
当店の書籍担当者3名が8冊ずつ推薦した準新刊の中から、毎月8点選んでいる誠品選書。
2024年10月も新たな選書が揃いましたので、ご紹介いたします。
『世界中の翻訳者に愛される場所』
著:松永美穂 出版社:青土社
ドイツのトランスレーター・イン・レジデ
ンス制度を利用した著者の滞在記。「翻訳
者の家」と呼ばれるこの場所に集う、世界
中の翻訳者や現地の人達との温かな交流録
から、この場所が愛される理由、翻訳作品
を生み出す喜びや苦しみが見えてくる。
『柚木沙弥郎 旅の手帖』
著:柚木沙弥郎 出版社:平凡社
今年一月に101歳で亡くなった染色家の著
者が、1967年に体験した二か月余りのヨー
ロッパ旅行の記録。エジプトから北欧諸国
に至るまで、スケッチブックと手帖に克明
に描写された日々は、私たちがもう失った
世界の持つなつかしさに満ちている。
『パパイヤのある街』
著:山口守編 出版社:皓星社
日本の統治時代に台湾の作家が「日本語」
で書いた7編の短編小説を収録。当時の作
家たちは言語政策にいかに翻弄され、自己
表現に辿り着いたのか。すべて1930~40年
代に書かれたもので当時の台湾の風俗を知
ることができ、史料としての価値もある。
『とるに足りない細部』
著:アダニーヤ・シブリー 出版社:河出書房新社
著者はパレスチナ出身の女性作家。1948年
に実際に起きたイスラエル軍の兵士による
ベドウィンの少女の強姦殺人事件をもとに
した小説。ひとつの事件からイスラエルと
パレスチナの複雑な関係と、パレスチナ人
の歴史的な苦しみを描きだしている。
『アメリカの悪夢』
著:デイヴィッド・フィンケル 出版社:亜紀書房
アメリカのジャーナリストによるノンフィ
クション。ジョージア州に暮らす退役軍人
に焦点を当て、現在のアメリカの分断を描
き出す。分断の激しい時代において、政治
的信条の異なる他者に対して寛容でいるこ
との難しさと重要性も訴えている。
『愛される建築を目指して』
著:大西麻貴+百田有希/o+h 出版社:TOTO出版
伊東豊雄の流れを汲んだ若い建築集団の作
品集。有機的で自然にも社会にも馴染む彼
らの作品を、写真、図面、解説文を付けて
紹介。「愛される建築」を理念とする彼ら
の作品は、次世代の日本の建築も面白くな
りそうな予感を与えてくれる。
『隣の国の人々と出会う』
著:斎藤 真理子 出版社:創元社
翻訳家として長年韓国の言葉、社会、人々
に触れてきた著者が、自身の経験から「日
本との“あいだ”には何が生じるのか?」
を問う。韓国の人々にとっての言葉、詩を
重んじる文化は私たちにとって“似ている
ようで違う”を考えるきっかけとなる一冊。
『ジャッカ・ドフニ 大切なものを収める家』
著:北海道立北方民族博物館 高島屋史料館TOKYO 出版社:図書出版みぎわ
明治期以降の歴史に翻弄されたサハリンの
少数民族たち。そのひとつ、ウィルタ族の
言葉で“大切なものを収める家”を意味する
『ジャッカ・ドフニ』という名の、北方少
数民族資料館がかつて存在した―。今はな
いその館に収められた文化財をオールカラ
ーで収録した貴重な図録。
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台湾の誠品書店では、毎月「誠品選書」を選出しています。
1990年11月のスタート当時から、選書の基準を「すでに重版されたもの、版権のないもの、一時的に流行しただけのもの、通俗的な本は選ばない。学術的、専門的なもの、一般向けのものなどを問わず、難しいものである必要はないが、創作と出版に対する誠意があるものならジャンルを問わず推薦書籍とする」としました。
2019年、東京の日本橋にオープンした当店でも、「誠品選書」を通して読者に誠品の観点を伝えていきたいと考えています。日本の多種多様な出版物の中から、その月の代表的で、話題性、独創性があり、編集が優れている書籍をセレクトし、プレゼンテーションと投票によって、毎月8点の誠品選書を選出しています。