
当店の書籍担当者3名が8冊ずつ推薦した準新刊の中から、毎月8点選んでいる誠品選書。
2025年3月も新たな選書が揃いましたので、ご紹介いたします。
『ゲーテはすべてを言った』
著者:鈴木結生 出版社:朝日新聞出版
「芸術家の精神」とは、この世界を一本の
作品で語り尽くそうとすることであり、肉
体は滅びても、一人の人間の創った普遍的
な言葉や作品は永遠に残り続けることを、
豊富な文学的知識を引用しながら描き出す。
第172回芥川賞受賞作。
『絵本戦争』
著者:堂本かおる 出版社:太田出版
いま米国の多くの州で数々の本が禁書とな
っている。本書はあえて絵本にフォーカス
し、約100冊をとりあげ、それぞれの絵本に
何が描かれなぜ禁書とされたのかを解き明
かすことにより、米国の多様性と近年の政
治の混乱を浮き彫りにする。
『アーベド・サラーマの人生のある一日』
著者:ネイサン・ス ロール 出版社:筑摩書房
2012年イスラエルで起きたバス事故を軸に、
この地で起きたからこそ生じた遺族の苦悩
とパレスチナの現状とが詳細に描かれる。
戦争や紛争の恐ろしさは、決して人による
“攻撃”だけではない。日常に潜む不正や抑
圧が悲劇を生むことも実感させられる。
『恐怖への招待』
著者:楳図かずお 出版社:河出書房新社
「漂流教室」「まことちゃん」「神の左手
悪魔の右手」等漫画史に残る名作を多数遺
し昨年逝去した著者による“恐怖”の考察。
幼少時からの自身の体験や思想を元に平易
かつ魅力あふれる文章と作品ノート、短編
漫画も収められ非常に内容の濃い一冊。
『フェミニスト・ファイブ』
著者:レタ・ホング・フィンチャー 出版社:左右社
中国におけるフェミニズム運動を概括した
一冊。集会や報道の自由がない中国でフェ
ミニズムはどう拡まったのか?本書で描か
れる国際女性デーに逮捕された5人の女性
の行動と、ネットで拡がった怒りの声は、
社会に与えた影響の大きさを表している。
『ブック・ウォーズ』
著者:ジョン・B・トンプソン 出版社:みすず書房
Webから誕生したベストセラー小説の成功
例を切り口に、デジタル革命が創りかえた
書籍業界の歴史とその影響を、膨大なデー
タやインタビューから論じる。本当に紙の
本はデジタルに呑まれてしまったのか?等、
デジタルとの共存の可能性を問う一冊。
『廃墟建築家』
著者:ヘルベルト・ローゼンドルファー 出版社:国書刊行会
オーストリアの作家により1969年に発
表された幻想小説。人類が滅びつつある時
代に、“廃墟建築家”が設計した巨大シェル
ターに逃れた主人公が出会う7人の女性が
語る奇妙な物語。文中に溢れるバロック音
楽や建築への偏愛も読みどころ。
『人と人のあいだを生きる』
著者:播磨靖夫 出版社:どく社
1970年代から障がいを持つ人々の生活
や自己表現を支える場を作る運動に身を投
じ、昨年逝去した著者が自ら唱えたエイブ
ル・アート・ムーブメント、“できる”芸術
運動を語る希望の一冊。社会と障がいを持
つ人々をつなぐ試みはこれからも続く。
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台湾の誠品書店では、毎月「誠品選書」を選出しています。
1990年11月のスタート当時から、選書の基準を「すでに重版されたもの、版権のないもの、一時的に流行しただけのもの、通俗的な本は選ばない。学術的、専門的なもの、一般向けのものなどを問わず、難しいものである必要はないが、創作と出版に対する誠意があるものならジャンルを問わず推薦書籍とする」としました。
2019年、東京の日本橋にオープンした当店でも、「誠品選書」を通して読者に誠品の観点を伝えていきたいと考えています。日本の多種多様な出版物の中から、その月の代表的で、話題性、独創性があり、編集が優れている書籍をセレクトし、プレゼンテーションと投票によって、毎月8点の誠品選書を選出しています。